近年、STEAM教育は国内外でますます注目を集めています。
幼児期からこの教育アプローチを導入することで、子どもたちが早い段階で科学や工学技術、数学、芸術分野に興味を持ち、将来の成長に大きな影響を与えるとされています。特に、知識や技術を身につけるだけでなく、問題解決能力や創造力を育むことがSTEAM教育の大きな特徴と言われています。
しかし、幼児期にSTEAM教育を取り入れる際には、いくつかの課題も存在します。
本記事では、STEAM教育とは何か、そして幼児期から始めるメリットや課題、どのようにして子どもにSTEAM教育をしていくのが良いかについて解説します。
STEAM教育とは?提唱された背景と狙いを解説!
STEAMとは、以下の5領域の頭文字を取ったものです。
・Science(科学)
・Technology(技術)
・Engineering(工学)
・Art(芸術)
・Mathematics(数学)
STEAM教育はこれら5領域を含め、科学・工学技術の成長や価値創造に特化した人材育成や、また、技術者以外でもSTEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる全て子どもたちの育成を目的としています。
これまでの教育体系では、各分野がそれぞれ個別に学ばれることが多かったのですが、STEAM教育はこれらを統合的に学び、より複雑な課題定義や解決するための能力を育てることを目的とされています。
STEAM教育について、現役エンジニアの筆者の見解を書いています。以下記事もぜひ読んでみて下さい。
歴史的には、元々、アメリカで科学技術人材の育成のために政府対応の一環として進められてきたのが発端とされています(1)。典型的な例として、第二次世界大戦後の冷戦時に、ソ連が人工衛星の打ち上げに成功し(スプートニク1号)、アメリカ国内で防衛上の脅威がきっかけとされています(2)。科学技術は国家の存続に関わる重要問題なのです。
(1) 松原憲司 日本科学教育学会第44回年会論文集(2020) p9-p12
(2) 胸組虎胤 鳴門教育大学研究紀要 第34巻(2019) p58-68
日本においては、近年、STEAM教育の狙いの解釈が拡大されてきており、STEAM科目を個別に学習するのみならず、それらを統合することで、問題解決能力、創造力などの能力向上が重視されています。
つまり、文系・理系問わず、社会の問題解決や価値創出ができる人材育成を目指すという解釈ができます。
”もともとSTEAM教育は、科学、技術、工学、数学などの知識や技能を基にして、科学技術的なアプローチによって現実の課題を論旨明確に考え、創造的に解決する問題解決のためのプロジェクト型の学習である。”
新井健一 STEAM学会研究論文誌 Vol.1 (2018) p3-p6
個人的な見解としては、STEAM教育の目的を”社会課題の発見”や”問題解決能力”的なところに置いてしまうと、抽象度がかなり上がってしまって、かえってSTEAM教育の目指すところの解像度が低下するのではと思いますが、次の章でももう少し説明します。
幼児期からSTEAM教育をするメリットはSTEAM科目に興味を持つこと!
次に、幼児期からSTEAM教育に取り組むことの具体的なメリットについて見ていきます。
※本章がこの記事で一番伝えたいところです!
よくある解説では、STEAM教育のメリットとして、問題解決能力や創造力を育むことと解説されることが多いと思います。
もちろん、問題解決能力や創造力はこれからのAI時代において最も大切な能力の一つだと私も思います。
ただ、私はその解説だけではメリットとして説明不十分だと思います。
なぜなら、問題解決能力や創造力はSTEAM教育でなければ育むことができない能力ではないからです。つまり、STEAM教育でなくても伸ばすことができます。
STEAM教育が近年注目されるユニークなポイントは、理系科目(科学、工学、テクノロジー)を扱うところです。ストレートに言うと、メリットは理系科目に幼少期〜小学校の間に注力して学習する点だと思います。
ここで言いたいのは、「みんな理系を目指しましょう」なんておかしな議論ではありません。ただ、理系パパとして、個人的には、理系に進む選択肢を子供に与えてあげたいなと思います。そのために、幼児期からSTEAM教育を通して、科学や技術に興味を持たせたいと考えています。理系に進むには、やはり興味がないと難しいです。(私自身は昔から機械や科学に興味があって、将来の夢は科学者でした。)
世の中的には、少子化の影響もあるかと思いますが、理系人材が不足しているのを感じています。
以下の、文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」資料によると、理系の進路に興味がある中学生は20〜30%でした。理系人材の育成に日本も危機感を持っているようです。
過去のアメリカが危機感を感じたように、現代でも理系人材の不足は国家の技術力に直結します。だから国をあげて各国がSTEAM教育に熱をあげているのです。もはやAI/テクノロジー時代の今、技術者不足は国の問題でもあるのです。
STEAM教育の課題はSTEAM科目の専門家が教育現場に少ないこと!
STEAM教育は子どもの将来の可能性を広げるためにも、ぜひ取り組むべきだと思います。
しかし、実際にSTEAM教育を実践しようとするには課題もあります。それは、STEAM科目の専門家が十分に存在しないという問題です。
STEAM教育を学校や家庭教育に入れていくには、教える側の人にも各分野の専門知識が必要です。科学や技術、工学の分野は高度な専門性が求められるため、学校の先生や親がSTEAM教育の指導するためには、相応のスキルと知識が不可欠です。しかし、現状では、特に初等教育や幼児教育の現場において、これらの分野に精通した人が十分ではないと思います。
とはいえ、いきなり「技術に詳しくなれ」「こどもに説明できるように勉強しろ」と言われても難しいと思います。
そこで、バトン開発では、STEAM絵本の作成をしています。現役エンジニアが身近な科学を絵本にして、幼児期から読み聞かせができるようになっています。
下記より、バトン絵本のページを一度見てみて下さい。
幼児期からSTEAM教育を始めよう!STEAM教育絵本がオススメ!
STEAM教育を幼児期から取り入れるための具体的な方法として、絵本を活用することが効果的です。
STEAM教育のための玩具等も増えてきておりますので、併用すれば良いと思いますが、ダイレクトに科学について会話ができる絵本はやはり子どもが興味を持つのには最適です。
なぜ絵本が効果的なのか?なぜ絵本は子どもの興味や記憶にとって有効なのか?以下記事に絵本読み聞かせが子どもの教育で有効な理由について解説しています。
まとめ
STEAM教育は、子どもたちが、技術革新のスピードが加速するこれからの時代を生きていく上で必要な力を育むための重要な取り組みです。特に幼児期から取り組むことで、子どもたちは自然に科学や技術、数学、芸術への興味を持ち、学びの基礎を築くことができます。
しかし、実際に実践するにはまだいくつかの課題が残っており、専門的なサポートや教材の充実が求められています。家庭でも簡単に始められるSTEAM教育絵本を活用し、楽しみながら子どもたちと一緒に新しい学びの世界を広げていきましょう。